野球肩(投球障害肩)
野球の投球動作の他、テニス・バレーボールのサーブ・スマッシュ等、腕を大きく振る動作を繰り返すスポーツで生じる肩の痛みです。関節包や肩関節に付着する腱や筋あるいは骨の損傷によるもので、損傷の部位によって、肩の前方、または後方、時には上腕が痛みます。
肩のインナーマッスル強化①〜棘下筋エクササイズ
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野球肩の主な原因
単純に過度な投球動作が原因となることが多いですが、体幹や股関節の柔軟性不足、肩や肩甲骨周囲の筋力不足、不適切な動作フォームなど、様々な体の要因も絡んでいます。
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野球肩の種類
一言に野球肩と言っても、その原因や損傷は多岐に渡ります。ここでは主要な頻度の高い野球肩をご紹介します。
1.インピンジメント症候群
野球肩の原因の中でも多いのがインピンジメント症候群です。肩を使うたびに、肩峰や靱帯に上腕骨頭が衝突することにより、腱板※がはさまれ、肩峰下滑液包に炎症を起こし、肩が痛みます。野球の投球動作の他、ラケット競技など、腕を上に振り上げる動作を繰り返すスポーツでも発症します。
肩を上げていくとき、ある角度(70〜120°あたり)で痛みや引っかかりを感じ、それ以上肩を挙上できなくなリます。このような症状がインピンジメント症候群の特徴になります。2.腱板損傷
腱板とは、肩の中にある棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋という4つの筋肉の腱の複合体を言います。スポーツでこの部位を負傷することは多く、腱板損傷とは、肩にある上腕骨頭に付着している腱が骨頭から剥がれたり、破れたりする損傷のことを言います。投球動作の他、ラケット競技、あるいは転倒した際に肩から落ちるなどの外傷が、その原因として挙げられます。
痛みで腕が挙がらない。夜、痛みで目が覚める。腕を下ろす時にも痛みが走る。痛くなったほうの肩を下にして寝られないなどの症状が現れます。3.リトルリーグショルダー(上腕骨骨端線離開)
成長期の投球障害で、投球時や投球後に肩の痛みを訴えます。子どもの骨の端の方には骨を形成する細胞が密集する成長線という軟骨(成長軟骨)がありますが、骨に比べて強度が弱く、過度の投球による負荷で損傷し、上腕骨の肩の部分の成長軟骨(骨端線)の離開(骨端線離開)が起こって痛みが表れるスポーツ障害です。放置しておくと痛むだけでなく成長障害にも繋がる可能性もあります。投球動作の他、ラケット競技、あるいは転倒した際に肩から落ちるなどの外傷が、その原因として挙げられます。
投球時に痛み、投球後に痛み、肩をねじると痛みが出ます。4.ルーズショルダー(動揺肩、動揺性肩関節症)
一般人の範囲以上に肩関節が動いてしまう方に多いスポーツ障害です。肩関節の安定化に関わっている上腕骨と肩甲骨の間にある靭帯や関節包が先天的に緩い状態にあります。こういう人が肩を使いすぎると、周囲の組織を損傷し症状が現われてきます。
バレーボールのスパイクやサーブ、テニスのサーブやスマッシュ、槍投げなどでも生じます。
肩を使った時に痛みます。肩の不安定感・脱力感をともなうこともあります。また、投球時のフォロースルーの際に、肩が抜けるように感じることもあります。5.肩甲上神経損傷(けんこうじょうしんけいそんしょう)
棘下筋を支配している肩甲上神経が、投球のフォロースルーのような動作のときに引っ張られたり、圧迫されたりして損傷をおこしたものです。野球の投球の他、テニスのサーブやスマッシュ、バレーボールのスパイクなどでも起こります。
肩の痛みが肩の後ろ外側に放散します。肩甲骨の山が目立つようになります。肩全体に疲労感があります。 -
診察方法
肩の構造は複雑です。上記でご紹介した損傷のように、肩の中でも、どこの損傷なのか、医師が診察を行います。必要性に応じて超音波エコー画像、MRI画像も用い、痛みの部位がどこで、どの程度損傷しているのかを診断します。その結果と、患者様の希望を考慮して、最適な治療法を提案させていただきます。